中学受験の理科において、多くの受験生が「苦手」と口にするのが物理(電気・力学)や化学(水溶液・燃焼)の計算分野です。算数が得意な子は「計算すればいいんでしょ」と力技で挑み、算数が苦手な子は「数字を見ただけで無理」と拒絶反応を示します。
しかし、実は物理・化学の得点力は、純粋な算数力(計算スピードやテクニック)とはあまり関係がありません。本当に必要なのは、目に見えない現象を「見える形」に整理する図式化の技術です。計算ミスで落としているように見えても、その手前の「状況把握」でエラーが起きている子がほとんどなのです。今回は、物理・化学を「納得感のある得点源」に変えるための整理術を解説します。
なぜ「式を立てる前」に止まってしまうのか?
物理・化学が苦手な子の共通点は、問題文を読んでいきなり式を書こうとすることです。算数ならそれで解けるかもしれませんが、理科の計算問題は「自然界のルール」を数字に置き換える作業です。状況がイメージできていないまま立てた式は、砂上の楼閣に過ぎません。
- 力学(テコ・滑車):どこの支点を中心に、どちら向きに力が働いているか、矢印を描かずに頭の中だけで考えている。
- 電気(回路):電流がどう分かれ、どこで合流するかの「流れ」を、回路図の横に数値化できていない。
- 化学(中和・溶解度):混ぜる前の液体と混ぜた後の変化を、ビーカーの図で時系列に整理できていない。
理科の計算問題で大切なのは「計算」そのものではなく、「今、何が起きているのか」という現場検証です。この検証をサボると、条件が少し複雑になっただけで、何倍にすればいいのか、何と何を足せばいいのかが分からなくなります。
「図式化」は、思考のねじれを防ぐ「命綱」
物理・化学を解くとき、Soleadoが推奨するのは、「問題文の内容をすべて図に写し取る」という工程です。頭の良さで解くのではなく、図を描くという「作業」に落とし込むことで、思考のねじれを物理的に防ぎます。
| 単元 | おすすめの図式化 | 描くべきポイント |
|---|---|---|
| テコ・バネ | 横棒と矢印の図 | 支点からの距離、重りの重さ、向き |
| 電流 | 回路図への数値書き込み | 各ポイントの電流の強さ、豆電球の抵抗 |
| 中和・水溶液 | ビーカーの絵 | 水、溶質、反応後の沈殿を分けて書く |
たとえば「中和」の問題であれば、ビーカーの絵を描き、その中に「酸 10ml」「アルカリ 5ml」と数字を書き込みます。そして反応後の「余り」を横に添えます。たったこれだけの「手間」をかけるだけで、複雑な計算問題は単純な足し算・引き算、あるいは比の処理へと姿を変えます。
まとめ/次の一手(ToDo 3つ)
- 今日:物理・化学の問題を1問選び、式を書く前に「状況を説明する図」だけをノートに描かせてみる(10分)。
- 今週:計算で間違えた問題を見直し、「図を描かなかったから間違えたのか」を検証する(30分)。
- 今月:「理科はまず絵を描く科目」というルールを家庭内で徹底し、図のない解き直しは禁止する。
「比」という武器を正しく理科に転用する
物理・化学の計算を楽にする最強の武器は、算数で学ぶ「比」の考え方です。理科の現象には「比例」の関係が多く隠れています。
- バネの伸びは重さに比例する(フックの法則)。
- 中和する酸とアルカリの量は比例する。
- 電熱線の発熱量は電流の2乗に比例する(または電流に比例する関係を見つける)。
算数が得意な子は、すぐに「比」を使いたがりますが、理科では「何と何が比例しているのか」という前提条件の確認が欠かせません。条件の読み取りが甘いまま比を使うと、全く違う数字を算出してしまいます。図を描く工程は、この「比を適用しても良い場面かどうか」を見極めるための重要なステップなのです。
家庭での立て直し方:理想のノートより「動く図」を
「図を描きなさい」と言うと、きれいに定規を使って描こうとする子がいますが、その必要はありません。理科の図は、見せるためのものではなく、自分の頭を整理するためのツールです。フリーハンドで構わないので、力がどう動くか、粒がどう混ざるかという「動き」が見える図を描く訓練をしましょう。
まずは、解説にある図をそのまま真似して描くところから始めてください。解説を「読む」のと「自分で描く」のでは、脳への定着度が全く違います。物理・化学は、手が動くようになれば、必ず偏差値はついてきます。
まとめ/次の一手(ToDo 3つ)
- 今日:解説にある回路図や実験図を、白紙のノートにそっくりそのまま写す練習を1問だけやる(10分)。
- 今週:間違えた問題に対して「図の中に、分かっている数字を全部書き込んだか?」をチェックする(30分)。
- 今月:物理・化学の学習時間を「計算ドリル」ではなく「図式化のトレーニング」として位置づけ直す。
次回(第3回)は、暗記分野と思われがちな「生物・地学」について。膨大な知識をバラバラに詰め込むのではなく、一つの「ストーリー」として繋げて一生忘れないものにする暗記法を解説します。

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